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2020年01月20日

足元の宝物

じゅずつなぎコラム

事業プロデューサー / 大阪芸術大学 デザイン学科 講師
山本あつし

「あなたにとっての大切な町は?」と聞かれたら、どの町のことを思い浮かべますか?


「my home town わたしのマチオモイ帖」は、デザイナー、写真家、イラストレーター、映像作家、コピーライター、編集者など、日本全国のプロのクリエイターが、ふるさとの町、学生時代を過ごした町、いまくらす町など、自分たちが大切に思う各地の町への思いを、小冊子や映像作品、ポストカードにして紹介する、草の根の展覧会活動です。


東京と大阪での大きな会場から、地域に根ざしたギャラリーや図書館、町の小さな本屋さんまで、毎年大小さまざまな場所で展覧会を開催し、これまでに1771帖の作品が集まっています。(小冊子1205点・映像155点・ポストカード411点/2018年12月現在)


すべての作品に共通するのは、観光ガイドには載ってない、個人目線での町の風景や物語が、写真やイラスト、文章で自由に綴られているということ。そのひとつひとつには「○○帖」というタイトルがつけられているのですが、これはそれぞれが取り上げた町名(「○○町」)にかけていて、全国のマチオモイ帖がズラリと並ぶ展示会場は、さながら「町の博覧会」のよう。「地方創生」が叫ばれるいま、自分の足元を見つめなおそうとする視点が、各方面からの注目を集めています。


そのはじまりは2011年。最初の一冊は、大阪で働くコピーライター・村上美香さんが、広島県尾道市にある故郷の島のことを綴った「しげい帖(重井町)」でした。

年老いていく実家の両親、そして島の将来のことを心配に思いながらも、離れて暮らしている状況では何もできず、ただモヤモヤする毎日。ちょうどそんなときに起こったのが東日本大震災でした。テレビのニュースから聞こえてくる「○○町、○○町、○○町...」という、東北の知らない町の名前が耳から離れず、ますますその思いは強くなっていきました。

しかし自分にとって、直接的な被災地支援を行うのは、色々な意味でハードルが高い。そこで日本中の人がまわりまわって支えあえるよう、まずは自分のふるさとを記憶しておく冊子をつくり、町のイベントで配ろうと考えたのでした。


瀬戸内で育った村上さん自身の思い出を綴った詩と写真に加え、小学校の校歌や「重井町クイズ」など、地元の人なら誰でもわかる共通の話題で構成された「しげい帖」は、町の人にたいへん喜ばれました。その光景を見た村上さんは、ふるさとが過去の町ではなく、いまを生きている町であることを実感し、そこから自分と重井町との新しい関係がはじまったと言います。

この取り組みがクリエイターたちに共感を呼び、みんなでつくろうと生まれたのが「わたしのマチオモイ帖」でした。「町おこし」は一朝一夕にはできない。でも「町を思うこと」なら誰にでもできる。そんな思いを込めて「マチオモイ帖」という名前が付けられました。


僕はこの活動に、最初は一出展者として参加していました。当時はまだ独立したばかりで、これから地域と向き合う仕事に取り組もうと動き始めた頃、マチオモイ帖と出会い、そのコンセプトに共感したのでした。そして気がつけば、企画や運営を手伝うようになり、いまではライフワークのひとつになりつつあります。

いつもの通学路、やさしかったおばあちゃん、路地に屯(たむろ)するネコたち、毎年楽しみにしていた盆踊り...。マチオモイ帖の一冊一冊には、そんな自分の中にしかない、あたりまえだけど愛おしい宝物たちが散りばめられています。

いま自分が自分らしくあれるのは、人や町が育ててくれたから。だから大切な町を思うことは、自分自身を見つめることでもあります。オリンピックが開催され、世界中から日本に熱い視線が注がれる2020年。そのとき私たちが誇るべきものは、自分たちの足元にあるのかもしれません。

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コンテンツへのコメント

  • 2020年2月 2日 16:29
  • キャンベル

重井町、「因島水軍まつり」の体験小早に参加したくて大阪から何度も訪れていました。お祭り中は島ごと大賑わいで、重井中のグラウンドが駐車場になるんですよね。

いつもの読み慣れたわっかの文章の中に、思い浮かべることができる風景が出てきて、うれしくなって思わずコメント。

何度も足を運ぶうちにお友達もでき、私にとっても重井町は「思いを馳せる町」になっていました。
お友達の名前もモチロン、村上さんです。

私もマチオモイ帖作ってみようかな。

  • 2020年1月24日 21:35
  • トラママ

社会人になり地元を離れて初めて、それまでくらしていた町には自分の居場所があったことに気づきました。両親や家族、生まれ育った町のあたたかさに改めて感謝しました。でも新しい町で生活しているうちに、そこにも新しい人とのつながりができ、自分の居場所が増えたことに気づいたとき、とてもうれしかったことを覚えています。マチオモイ、とてもとても素敵な言葉ですね。

  • 2020年1月22日 19:37
  • 花遊び大好き婆ちゃん

マチオモイ帖はじめてしりました。でも我が町、故郷を愛する、適確なネーミングだと思いました。町の変貌は田舎に限ったことではなく、私の住む界隈でも空き地や、閉店した商店街70数年生きてきた自分には通学路のレンガ塀、畑や田んぼの風景、唯一楽しみだった本屋さんほとんど見かけなくなってしまいました。町おこしとして取り組む若い方たちの情熱でまた新しい街並みができるんでしょうね。

  • 2020年1月20日 18:20
  • ぴろこ

すごく良い企画だなぁと、思わずほっこりしました❗全国に広まると良いですね。地球規模も不可能じゃないですよね。拝見できる機会があると良いな。

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