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2020年04月13日

「きっかけ」をつくる

じゅずつなぎコラム

事業プロデューサー / 大阪芸術大学 デザイン学科 講師
山本あつし

今回は、まち全体を美術館に変える大阪府和泉市の取り組みについてのお話。映画『ナイトミュージアム』のように、美術館から収蔵品たちがまちのあちこちへとあふれだしたら...そんな発想から生まれたのが、『ART GUSH(アートガッシュ)』です。("GUSH"とは英語で「あふれだす」という意味)

泉北高速鉄道「和泉中央駅」から和泉市久保惣記念美術館を繋ぐ約2kmの道のりには、商業施設や公共施設、学校、集会所、公園の壁や、歩道橋の桁下など様々な場所に、同館のコレクションをモチーフにした、色とりどりな30点の壁画たちが点在しています。それを手掛かりに、まちを周遊しながら美術館に至る体験を生み出す企画を考えました。

(2019年3月撮影)

これらの壁画を描いたのは、広告業界やアートシーンなどの第一線で活躍するプロをはじめ、障がいをもつアーティスト、イラストレーションを学ぶ大阪芸術大学の学生、和泉市出身・在住のデザイナーやイラストレーター、市内のアート教室に通う子どもたちを含む、関西所縁のクリエイター30組。彼らの自由な想像力が、北斎や写楽、モネやゴッホなど、古今東西の芸術家たちの作品に新しい命を吹き込み、見慣れた日常風景を見事にアップデートしてくれました。

これは、美術館を中心としたまちのブランド化を目的とした「和泉・久保惣ミュージアムタウン構想」の一環として生まれたプロジェクト。地元企業からの寄贈により1982年に開館したこの美術館は、東洋古美術を中心に約11,000点のコレクションを誇り、国宝や重要文化財をはじめ、美術マニア垂涎の名作も数多く収蔵されています。

しかし近年、入館者数は減少傾向にあり、またそのうち市内在住の人は2割程度しかいないというのが現状でした。また駅から美術館へと続く道には捨てられたゴミや吸い殻、それに落書きが目立ち、決して美しいとは言い難い状況です。

そこで美術館をまち全体に拡張していくことで、そこに住む人たちの意識に働きかけ、日常の視点を変えていこうと考えました。壁画を見ながら「もとはどんな絵だったのだろう?」「どうしてここにあるのだろう?」と疑問に思うことをきっかけに、美術館にも自分たちのまちにも、もう一度目を向けてもらおうというわけです。

「お披露目ウォーク」の様子(2019年3月撮影)

2019年3月の公開当日、壁画を手がけたクリエイターたちと一緒に歩く「お披露目ウォーク」を開催したところ、予想をはるかに上回る参加がありました。マスメディアにも取り上げられ、公開後も市内外の多くの人が歩いてくれているようです。しかし何より素晴らしいと感じたのは、このプロジェクトをきっかけに、周遊ルートを掃除する市民活動が始まったことでした。有志の方々が集まり、公開から一年以上たった今も定期的に活動を続けられています。

価値とは、新たにつくらなくても、実はもとからそこにあるものなのかもしれません。だからこそ、それを見つけ出す「きっかけ」をいかにつくるかが大切なのだと感じます。

*写真は2019年2-3月に撮影されたのものです。

『ART GUSH』公式サイトはこちら

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コンテンツへのコメント

  • 2020年4月28日 13:50
  • ゆめゆめ子

こんな素敵な所が有るんですね。
コロナが収束したら、じっくり
訪れたいと思いました♪

  • 2020年4月15日 22:56
  • ぱくちゃんのママ

和泉市在住です。今は子どもが小さいので美術館には行けてませんが、和泉中央駅・シティプラザ周辺のアート作品はいつも目にしていて、楽しませてもらっています。こんな、美術館から〝溢れ出した〟取組み素敵だなと思います。

  • 2020年4月14日 20:34
  • なっちゃんのママ

私も久保惣美術館、大好きです。美術館へは駅から歩いて行きますが、壁画があるとは知りませんでした。次回行くときは注意して見ようと思います。

  • 2020年4月13日 18:20
  • ぺぺ

久保惣美術館はお気に入りの場所です。収蔵品も素敵だし、お庭を眺めているとゆったりとした時間を過ごせます。こんな取り組みがされているとは…。いつもはバスで行きますが、駅から歩いてみるのもいいですね!

  • 2020年4月13日 15:35
  • 羽曳野の道

和泉惣美術館、宮本武蔵の掛軸を見たくて何度か訪問しました。お庭も音楽建物もあり、お気に入りです。最寄り駅からはバス利用してましたが、道筋のアートが楽しめるので有れば歩いても良いかも。

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