2020年08月17日
プレゼントを贈るように話す
じゅずつなぎコラム

事業プロデューサー / 大阪芸術大学 デザイン学科 講師
山本あつし
ある日の授業で、学生との対話。
「さて、提案と押し付けの違いとは何でしょう?」
「難しい問いかけです。提案は自分の考えを示すことですし、押し付けはこちらの言うことを無理にきかせるということですよね。こちらが良いと思った提案でも、場合によっては相手は押し付けと感じることもあるでしょうし・・・」
「いい着眼点です。ということは、自分が相手と同じ方向を見ていなければならないということですね。では、そのために必要なこととは何でしょう?」
「うーん・・・相手のことをよく知ること、でしょうか」
「その通りです。相手のことをよく知った上で提案しなければ、どんなにいい案だと思っていても、それは押し付けになりますね」
「でも相手のことをよく知るって、言うのは簡単ですが、なかなか難しいです。どうすれば良いですか?」
「相手の話を、まずはよく聞くこと。その上で提案を考えることです」
「とてもあたりまえのことのように思います」
「そうですね。しかし、これが意外と難しいのです。なぜならその人の話が、その人の求めるもの全てではないからです。その話の周囲にどんな思考や感情があるのか、それも感じ取ることが必要です」
「なんだか一気にハードルが高くなりました」
「たしかに、これはかなり難しいことです。ただ、そこに近づける方法が一つあります」
「近づける方法・・・何ですか?」
「それは、相槌を打つことです」
「相槌?」
「そうです。相槌を打つことで相手は話しやすくなります。そうすれば話が膨らんで、その周囲にあるものも見えやすくなります」
「なるほど!話をちゃんと聞いていると態度で示せば、相手は話しやすくなるわけですね」
「自分がやりたいことを提案するのではなく、相手が何を求めているのか、あるいはどんな問題を抱えているのか、まずはそこに耳を傾けてから何が必要かを考える。それが本当の提案というものです」
「提案することが大切なのではなく、相手が欲しいものを提供することが大切なのですね」
「そうです。自分がしたい話をするのではなく、相手が聞きたい話をする。それはまるで、相手に喜んでもらうプレゼントを贈る行為のようです。私たちは、そんなふうにデザインできる人になりたいものですね」

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コンテンツへのコメント
- 2020年8月22日 21:38
- パンダグリーン
相槌と聞いて、思い出すのは武田鉄矢さんです。テレビで見るだけですが、人の話を聞く時の感じがとてもいいです。あんな風に聞いてみたら、自然に話せそうです。
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- 2020年8月20日 11:36
- 小太郎
子育ての時、子供たちに自分の考えを押し付けただけで、しっかり聞くことができなかったと反省することばかりです。夫は単身赴任、地方出身の私は頼るものとてなく、仕事に追われ子供の話に耳を傾けることができず、古希を過ぎた今、悲しそうな子供の顔を思い出します。それでもまっすぐ育ってくれた子供たちに感謝の一言です。
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- 2020年8月18日 14:18
- DAISY
意見を聞かれたら1つ提案をしてみて、いやそれはだめやわ、と言われるとまた別の提案をしてみます。そうしていく内に、やっぱりこうするわと自分の結論に達するみたいです。どうもそれは始めから決まっていた様です。
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- 2020年8月17日 18:13
- 大阪のおばあちゃん
提案か 押し付けか。そうだったのか❗️
自分では、押し付けと気付かなくて言っていたと大いに反省しています。
孫が小四になって急に、注意や間違いを指摘すると(ハイハイ❗️ばあちゃんの言う通り。何でもばあちゃんが正しいわ❗️)
などと反撃に出ます。
成長したなと呑気に思っていました。
しかしそれが
押し付けがましくて嫌なんだ!とわかりました。
反省です。
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なるほど。
努力します。