2020年05月04日
代用の調味料
じゅずつなぎコラム
愛知淑徳大学 教授 / 管理栄養士
東山幸恵
関西で下宿生活を送っていた大学時代、毎月決められた仕送りでやりくりするために日々の食事はできるだけ自炊で賄うよう、財布の紐を管理していました。
下宿先の近くにあった市場はいつも値打ちで、夕方に行けば豆腐屋さんがビニール袋いっぱいに詰めた「おから」をタダでくれたり、ザルに二、三種の野菜を盛り合わせて「これで100円!」と声を張る八百屋さんがあったりと、貧乏学生にはありがたく、足しげく通ったものです。
当時の物価で1日1人分およそ500円程度で買い物を収めることを目標に、鵜の目鷹の目でお値打ち品を見定めていたことを思い出します。
そんな予算が狂うのが、醤油や味噌などの調味料を買わねばならない時でした。野菜や卵、肉などは目に見える消費食材ですが、調味料は学生にとって予算想定外の食材。量や品質によっては意外と高価で、かといってなしで済ますことはできません。
ある日、安く手に入れたブリのカマと大根とで「ブリ大根」を作ろうとした時(学生が作るものとしては渋めのメニュー)、ハタとみりんがないことに気づきました。自宅で母が作るときにはいつもみりんを使っていたし、料理本にもみりん、と書いてある。しかし、みりんは結構高い・・・さて、どうしたものか。
みりんが「甘みのある酒」ということは知っていました。そこで日本酒に砂糖を足せば代用になるだろう、ということで調べてみると、「酒の容量に対して3分の1の砂糖を加えると、みりんと同じ甘みになる」との資料を見つけ、早速作ってみたところ、それなりの味の、それなりのブリ大根が完成しました。
照りを出したり、臭みを消すなど、みりんならではの役割があるものの、万が一切らした時は他で代用できることを体感したものです。
さて、社会人となり調味料を切らすことは少なくなりましたが、たとえみりんを切らしても「酒+砂糖」以外に、煮詰めると甘味が生まれる酢を加えたり、梅酒など甘味のある果実酒を使うなど、身近な食材が役に立つことがままあります。
何かと制限は不便ですが、一方で料理においてはアイディアがひねりだされ新しいレパートリーが広がるきっかけになることも。必要が生む発見は、小さな生活の中にもあるようです。
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父が渦味を嫌がるので実家に行くと薄口しょうゆがありません。さっぱり味に仕上げるためにお醤油と塩を組み合わせて使っています。