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2021年06月21日

「伝える」を「伝わる」に(後編) ~これからの時代のコミュニケーション~

事業プロデューサー / 大阪芸術大学 デザイン学科 講師
山本あつし

前回、インターネットの発展によって「誰もが表現者になれる時代」が到来したとお話しました。SNSは新たなスター誕生を促し、クラウドファンディングはこれまでになかった価値創出を予感させます。そして新型コロナウイルスの広がりが、そのような状況をより加速させています。様々な方法で手軽に発信できるようになったいまだからこそ、「伝える」をちゃんと「伝わる」に変える、これからの時代のコミュニケーションについて考えていきましょう。

「こんなに一生懸命伝えているのに、どうしてうまく伝わらないのだろう?」

家庭で、職場で、あるいは友人や知人との会話で、そんなふうに思ったことはありませんか?心を込めてすべてを相手にぶつければ、必ずわかってもらえるはず。そう考えていたのに、伝えたかったことがちゃんと伝わっていなかったり、あるいは違う意味で捉えられていたなど、私たちの日常にはそんなコミュニケーションのトラブルが溢れています。

リモートワーク、オンライン授業、Zoomなどを使ったテレビ会議。2020年、一気に広がったオンラインでのコミュニケーションともなれば、それはなおさらかもしれません。視覚と聴覚のみ、しかも画面の枠で切り取られた限定的な情報で判断せざるを得ない場面も多くあり、それがお互いの誤解に繋がって、ストレスを生み出してしまうということも少なくなさそうです。オンラインの環境では、相手と対面するよりも少ない情報を元にしたコミュニケーション能力が求められるのです。

そう言えば以前、親しくさせていただいているラジオDJの方がこんなお話をされていました。

「映画を観て、番組でその紹介をする。後日、それを聴いたリスナーの方が『観に行きました』と教えてくださる。そういう瞬間に、『伝える』が『伝わる』に変わったと感じるんですよね」

これを聞いて、なるほどと感じました。つまり、ただ単に自分が伝えたいことを話すだけでは「伝える」どまりで、相手が共感してくれてこそ「伝わる」ということなのだと。

さらにその秘訣について質問すると、こんな答えが返ってきました。

「自分の友人や知り合いの顔を思い浮かべるんです。ああ、この情報はあの人に伝えたいなとか、これはあの人が聞いたら喜んでくれそうな話だなとか。そうイメージしながらマイクに向かい、『みなさん』ではなく『あなた』と呼びかけるんです」

見えないから、イメージする。ラジオという音声のみで伝えるメディアだからこそ、広く伝えることよりも、まずは聴いてくれている一人ひとりのことを思い浮かべ伝える。そうすることで、一方通行ではない相手を思いやる気持ちが生まれ、伝えたいことがより伝わりやすくなります。ここに、オンラインでのコミュニケーションの難しさを乗り越えるヒントがあると感じます。

そして相手を思いやるためには、自分と相手は違う存在であると認識することも大切。私たちは日常生活の中で、いつの間にか他人と自分は共通するところが多いと考えがちです。だから不可解な行動を取る相手には「普通はこうするものじゃない?」と責めたりする。そして時にそれは、望まない衝突を生み出してしまいます。そこに思いやりの気持ちはありません。

そこでおすすめなのは、「前提」を変えてみることです。自分と相手は同じではなく、違うのだということを前提にするのです。「同じ」と思うと「違い」が気になりますが、元から「違い」があると思えば「同じ」を見つけることが喜びになります。

例えばこちらが話している時に、相手がムッツリと難しい表情をしているとします。眉間にはシワまで寄せて...。「機嫌が悪いのかな?」「何か気に触ることを言ったかな?」そんなふうに感じて、不安になってしまいそう。でも、もしかするとそれは、あなたの話を一生懸命に聞いているという、その人なりのポーズなのかもしれません。

自分だったらこうするけど、相手は違うのかもしれない。「こうだ」と決めつけず、あらゆる可能性をイメージすることで自ずと相手に興味が湧き、相手が何を望み、いまどんな気持ちでいるのかを知りたくなります。

そして、相手がどう感じているのかわからない、そんなときは聞いてみるに限ります。「〇〇さん、ご理解いただけましたか?」と。たいていの誤解はそれで解けるはず。こんなふうにちょっと一歩踏み出す勇気って、相手も自分も大切にする「やさしさ」なのだと思います。

ここまでオンラインでのコミュニケーションについて書いてきましたが、実はこれって特別なことではなく、対面の状況でも同じことが言えると思うんです。これからの時代のコミュニケーションは、オンラインと対面でのやり取りを、それぞれの特徴をいかしながら上手く使い分ける時代だと言われています。でもネットのオン・オフに関わらず「伝える」を「伝わる」に変えるのは、イメージして考え行動する、そんな「やさしさ」という知恵なのではないでしょうか?

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コンテンツへのコメント

  • 2021年6月26日 22:01
  • プリンちゃん

色んな人がいると分かっているつもりでも、ついつい私なら…と同じように考えるだろうと思ってしまいがちです。伝わる、ように話してみようと思いました。

  • 2021年6月26日 16:29
  • あ―ちゃん

伝えるだけでなく、伝わるようにする。ということは、とても大事なことですね。私も相手の方が自分と同じ考えだと思ってしまうことがよくありますが、いろんな考え方や感じ方があると思うようにしたいです。

  • 2021年6月26日 14:33
  • 小太郎

コミュニケーション能力が低いと自覚しています。文章に書く方が自分の気持ちを伝えやすいのです。知人でとても表現の上手な人がいて、いつもいいなぁと眺めていました。井戸端会議が苦手です。

  • 2021年6月25日 00:57
  • わトモのひとり

「相手がどう感じているのかわからない、そんなときは聞いてみる」いつものわたしの行動です(笑)自分の頭の中だけで考えてモヤモヤや不安を抱えるよりも、ちゃんと伝わってるかなーと感じたときは、直接聞いてしまうのが本当に手っ取り早い。伝えたいことが相手に伝わっていないことで行き違うなんてただもったいない。とは言え、大人になればなるほど「伝わる」の前に「伝える」ことすら諦めてしまっていることが多いのが現状ではないのかなぁ…と思ったりもします。

  • 2021年6月24日 08:02
  • ころまま

良いお話をありがとうございました。先週は怖いなぁと伝えることを思いましたが、今週考えを改めました。押し付けると伝えたい事も伝わらなくて、相手を思うことで自分の思いも伝わるんだな。

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